第77章 君も見たとおり、君の両親は蓮が大好きだ

中野航平は強引だった。長谷川栞が妊娠していることだけは意識して、乱暴にならない程度の力で彼女の腕を引き、車内へ押し込む。後部座席に座らせ、そのまま逃げ道を塞いだ。

「あなた……」

長谷川栞は冷えた顔のまま、言葉だけを吐く。

航平が身を屈める。左手をシートの背に置き、身体ごと栞を囲い込むようにして。

彼の匂いが、容赦なく長谷川栞を包んだ。

その瞬間、喉まで出かけていた罵声が、すっと引っ込む。

――あの時。

航平に助けられた夜。彼の匂いは、栞にとって「安心」の匂いだった。

けれど、今は……。

瞳をわずかに曇らせ、冷たく押し返す。押しても動かない。むしろ航平のほうが、さらに距離を...

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